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東京地方裁判所 平成3年(行ク)14号 決定

原告

X1

X2

X3

X4

X5

X6

X7

X8

X9

X10

X11

X12

X13

X14

X15

X16

X17

X18

X19

X20

X21

X22

X23

X24

X25

X26

X27

X28

X29

X30

X31

X32

X33

X34

X35

X36

右原告ら訴訟代理人弁護士

保持清

三上宏明

鈴木淳二

阿部裕行

亀田信男

藤沢抱一

高橋美成

加城千波

大口昭彦

遠藤憲一

秀嶋ゆかり

被告

福岡刑務所長岩﨑四郎

長野刑務所長杉田博

札幌刑務所長山口静夫

長崎刑務所長鮫島正一郎

新潟刑務所長黒田康雄

鳥取刑務所長梅崎元也

宮崎刑務所長興梠睦明

秋田刑務所長清野廣司

鹿児島刑務所長石井俊文

神戸刑務所長後藤滋

広島刑務所長松村猛

網走刑務所長本田孝信

小倉刑務所長高口安美

甲府刑務所長窪田政尚

帯広刑務所長浅井堅司

福島刑務所長舛屋一

前橋刑務所長佐藤質

松江刑務所長川﨑克

右代表者法務大臣

左藤恵

右被告ら指定代理人

足立哲

外三名

主文

一  原告X1及び同X2と被告福岡刑務所長及び同国との間の訴訟並びに原告X25及び同X26と被告小倉刑務所長及び同国との間の訴訟を福岡地方裁判所に移送する。

二  原告X3及び同X4と被告長野刑務所長及び同国との間の訴訟を長野地方裁判所に移送する。

三  原告X5及び同X6と被告札幌刑務所長及び同国との間の訴訟を札幌地方裁判所に移送する。

四  原告X7及び同X8と被告長崎刑務所長及び同国との間の訴訟を長崎地方裁判所に移送する。

五  原告X9及び同X10と被告新潟刑務所長及び同国との間の訴訟を新潟地方裁判所に移送する。

六  原告X11及び同X12と被告鳥取刑務所長及び同国との間の訴訟を鳥取地方裁判所に移送する。

七  原告X13及び同X14と被告宮崎刑務所長及び同国との間の訴訟を宮崎地方裁判所に移送する。

八  原告X15及び同X16と被告秋田刑務所長及び同国との間の訴訟を秋田地方裁判所に移送する。

九  原告X17及び同X18と被告鹿児島刑務所長及び同国との間の訴訟を鹿児島地方裁判所に移送する。

一〇  原告X19及び同X20と被告神戸刑務所長及び同国との間の訴訟を神戸地方裁判所に移送する。

一一  原告X21及び同X22と被告広島刑務所長及び同国との間の訴訟を広島地方裁判所に移送する。

一二  原告X23及び同X24と被告網走刑務所長及び同国との間の訴訟並びに原告X29及び同X30と被告帯広刑務所長及び同国との間の訴訟を釧路地方裁判所に移送する。

一三  原告X27及び同X28と被告甲府刑務所長及び同国との間の訴訟を甲府地方裁判所に移送する。

一四  原告X31及び同X32と被告福島刑務所長及び同国との間の訴訟を福島地方裁判所に移送する。

一五  原告X33及び同X34と被告前橋刑務所長及び同国との間の訴訟を前橋地方裁判所に移送する。

一六  原告X35及び同X36と被告松江刑務所長及び同国との間の訴訟を松江地方裁判所に移送する。

理由

一本件請求のうち訴状記載の請求の趣旨一項及び二項の各請求は、全国各地の刑務所で服役中の者及びその養親が、それぞれの収監先の長である刑務所長を被告として、養親子関係にある原告ら相互間の面会及び私信の発受信を妨げてはならないことを求めるものであり、これらの請求が、公権力の行使に関する不服の訴訟として行政事件訴訟法三条一項の抗告訴訟に当たることは、原告らもこれを自認するところである。

そうすると、右の各訴えは、原告らがそれぞれ被告とする各刑務所長の所在地である裁判所の管轄に属するものであり(同法一二条一項)、右のいずれの請求についても、各被告が当裁判所での審理に応じない旨を明らかにして移送の申立てをしている以上、当裁判所に管轄権がないことは明らかである。

この点について、原告らは、右各抗告訴訟は、当庁を管轄裁判所とする原告らの国に対する国家賠償法に基づく各損害賠償請求(本件請求のうち訴状記載の請求の趣旨三項の請求)に併合して提起されたものであるから、民事訴訟法二一条の規定によって当庁にも右各訴えの管轄権が認められるべきであると主張している。しかし、民事訴訟に併合して提起することができる請求は、原告として、これと同種の訴訟手続によるべきものに限られており(民事訴訟法二二七条)、本来異種の訴訟手続によるべき行政訴訟と民事訴訟の訴えの併合提起が許されるのは、行政事件訴訟法一六条一項等の特別の規定がある場合に限られるものというべきところ、行政事件訴訟法には、取消訴訟及びその他の抗告訴訟に同法一三条所定の関連請求を併合することを許す規定は存在するものの(同法一六条一項、三八条一項)、これとは逆に右の関連請求に取消訴訟その他の抗告訴訟を併合することを許す旨の規定は存在しない。そうすると、本件の場合も、請求の趣旨三項の損害賠償請求の訴えに同一項及び二項の抗告訴訟を併合提起したものとして取り扱う余地はないこととなるから、右各損害賠償請求の管轄権が当庁にあることをもって、各抗告訴訟についても当庁に管轄権があるとすることはできないこととなる。

したがって、請求の趣旨一項及び二項の各請求に係る訴えは、それぞれその被告である各刑務所長の所在地の裁判所に移送すべきこととなる。

二次に、本件請求の趣旨三項の請求は、いずれも、原告らがそれぞれその収監先の刑務所長によって違法に面会及び通信の機会を奪われ、精神的苦痛を被っているとして、国家賠償法一条に基づき、国に対して慰藉料の支払を求めるものであり、これらの請求は、それぞれ当該各原告の請求の趣旨一項及び二項の請求の関連請求に当たるものである。

右のような事情からすると、右各損害賠償請求についても、原告らが右のような違法行為の直接の行為者であるとする各刑務所長に対する前記の各抗告訴訟と併合してこれを審理することが、訴訟経済及び裁判の矛盾抵触の回避という点からして望ましいことは明らかなものというべきである。

したがって、請求の趣旨三項の請求についても、これを各原告らの前記抗告訴訟の移送先である各裁判所に移送することが相当である。

(裁判長裁判官涌井紀夫 裁判官市村陽典 裁判官近田正晴)

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